過日の学長研修会において、「国立大学等の独立法人化と公立大学の対応」に関する議論をして頂きました。この問題の基礎となる資料を用意致しましたので、ダウンロードして御利用下さい。
この資料は横浜市立大学の加藤学長から頂きました。全体像を把握するのに大変良い資料だと思いますので、御活用下さい。
学長研修会において、国立大学等の動きを見ながら公立大学協会としての対応を検討するために、北九州大の田中学長、横浜市大の加藤学長、愛知県大の森学長、大阪市大の児玉学長、長野県看護大の見藤学長及び都立大学の磯部法学部長をメンバーとして特別委員会(「法人化問題特別委員会」と称する)を構成することが承認され、10月31日深夜に第1回目の会合をもちました。
11月23日に2回目を開催し、児玉学長を委員長に選出するとともに、上記委員に加えて札幌医大の秋野学長と秋田県立大学の鈴木学長に委員をお願いすることを決めました。
12月26日に第3回目の委員会を開催し、アンケートを実施することを決めました。
1月24日に第4回目の委員会を開催し、アンケート結果の分析をしながら議論をしました。委員会は今後これを参考にして議論を進めていきます。
3月2日に第5回目の委員会を開催しました。
この問題に関する情報や御意見等をお寄せ下さるようお願い申し上げます。
平成13年2月2日
公立大学協会 法人化問題特別委員会
以下のメモは、第4回法人化問題特別委員会(平成13年1月24日)において、小委員会から提案された資料をもとに検討した結果を踏まえ、さらに小委員会で修正したものです。今後さらに検討すべき課題を一覧してありますが、まだ十全ではありません。今後、すでに実施した学長アンケートなどを参照し、末尾に一覧した課題項目についてコメントを付して、次の検討に入りたいと考えておりますが、とり急ぎ加盟校の参考に供すため、このままで掲載します。ご意見をお寄せ下さい。
国立大学の法人化の検討は、平成12年5月に国立大学長等に対する文部大臣説明があり、7月に文部省の「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」(国立大学等の等は国立の大学共同利用機関をさす)が設置されて以降、急速に進んでいる。
調査検討会議での検討作業は、「組織・業務」「計画・評価」「人事制度」「財務会計制度」の4つの委員会で、課題を分担して行われており、先行する委員会ではすでに7回目の会議を行っている。
この検討作業のテンポを踏まえ、5月頃の取りまとめを目途として、既に中間とりまとめの起草委員の選考を終えた委員会もある。調査検討会議の設置当初、「平成13年の夏~秋に中間的な整理を行い、平成13年度中に最終的なとりまとめを行う。」と言われていたスケジュールは、実質的には相当前倒しされている。
一方、公立大学は、これまでにも多くの場面で国立大学準拠主義を取ってきたため、今回の独立行政法人化問題においても、その波が公立大学に及んでくるのは国立大学法人化が行われた後ではないかという、緊迫感に欠けた認識が少なくない。
国立大学の独立行政法人化問題は、国の行政組織の一部を切り離し外部化する、国の行政改革の一環として出発したものである。行政改革の目標として効率化・透明化・スリム化等が挙げられており、そのために「企画」機能と「実施」機能を分離し、実施機能を独立行政法人に委ねることが前提とされている。特にこの改革が公務員定数の削減案の1つとして提起された経緯があり、大学のあるべき論から出てきた訳ではない。
平成9年12月の行政改革会議「最終報告」では独立行政法人化が「国立大学の大学改革方策の1つの選択肢となり得る可能性を有しているが、これについては、大学の自主性を尊重しつつ、研究・教育の質的向上を図るという長期的視野に立った検討を行うべきである」と述べている。独立行政法人化が国立大学にも及ぶことが明らかになったのは、平成11年4月の閣議決定で「国立大学の独立行政法人化に関して検討を進め、平成15年までに結論を得る」と決定してからである。この直後の平成11年6月から、国立大学協会(第一常置委員会)が検討に着手した。
国立大学協会や文部省は、教育研究を事業とする国立大学における「企画」と「実施」の完全な分離が困難であるとともに、学校教育法、教育公務員特例法等により運営されている大学と通則法の規定する独立行政法人との間には大きな乖離があると認識し、文部省は平成11年9月の「国立大学の独立行政法人化の検討の方向」の中で国立大学独自の法人化(独立行政法人の特例措置)を提案した。
平成12年5月には「提言 これからの国立大学の在り方について」(自民党政務調査会)が公表され、ついで同月、「国立大学長・大学共同利用機関長等会議における文部大臣説明」がなされた。これらの意見表明のなかでは、独立行政法人とは別に「国立大学法人」などの名称の提案、「渡し切り」の運営費交付金、高等教育・学術研究への公的投資の拡充などをうたっているが、それと同時に「学長選考の見直し」「教授会運営の見直し」「教員の任期制の積極的な導入」などが強調されている。
この文部大臣説明を受け国立大学協会は6月の総会において、文部省の検討作業に積極的参加する旨を確認し、7月、「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」が設置されるにいたった。この下に4つの委員会を設け、各委員会は15名程度の委員及び専門委員で構成されることになり、公立大学からも4つの委員会に各1名の学長が委員がとして入った。また4委員会の調整を行う「連絡調整委員会」には各委員会の主査・副主査と公立大学協会会長などが委員となった。
この調査検討会議においては、大学の法人化が行政一般の独立行政法人とは性格が異なることが強く主張され、教育研究の質の向上が法人化の最大の目的であるとの意見が共有されている一方、大学運営への外部意見の導入や全学的課題に対する教授会の役割など、大学側委員と民間側委員や文部省との間の意見の相違点も数多く見られる。
国立大学で進んでいる検討作業においても、守旧的な大学自治論と制度細部のテクニック論を行き来している状況も皆無ではなく、大学に対する今日的・社会的要請と大学のあるべき姿の双方を踏まえた、新たな制度づくりの議論とは必ずしもなっていない。
関係各方面における議論は、このように必ずしも同じ方向に向かっているとは言いがたい状況にある。国立大学の設置形態を変更するには、最終的には立法措置が不可欠である。その法律の審議・制定は平成14年通常国会(会期150日の後半か)と想定されており、それまでは予断を許さない。
公立大学は国立大学と同様にその運営経費の大半が税金によって賄われており、また法令上は大学も行政組織の一部と位置づけられているため、国立大学法人化の影響を大きく受けることは必至である。自民党提言や文部大臣説明においても、「公立大学についても関係者の意見を伺いながら国立大学に準じた対応を検討する必要がある」(文部大臣説明)と、明示的に表明されている。
しかし、公立大学と国立大学とは当然ながら同じではない。これと同様に自治体と国も、本来の役割や当面する課題がまったく同じとは言えない。公立大学と国立大学、自治体と国、この両者の共通面と相違面をはっきりと認識したうえで、公立大学としての課題を正しく把握することが肝心である。
行政改革の2本柱は、中央省庁の行政改革と「地方分権」(地方自治)である。今回の国立大学法人化は前者に端を発し、「国の行政改革」の一環として出てきたものである。一方、「地方分権」(地方自治)の進捗は必ずしも想定どおりではない現状において、自治体設置の公立大学の制度変更は、地方分権の進展と合わせて進める方法も一定の説得力があろう。
公立大学はその教育研究の質を向上させ、地域社会と人類社会に貢献する道を真剣に探るべきである。もし公立大学の教育研究の質的向上という目的を逸脱するような方向へと法人化議論が進むならば、われわれは国立大学法人や学校法人型(私学)とは異なる第三の道を選択せざるを得ない。現段階においては、第三の道の多様な選択肢まで視野を広げて、教育研究の質の向上という最高目的を達成する方法を考えるべきである。例えば国立大学法人化の利点を取り込み、会計をより透明性の高いものとし、十分な説明責任を果たしつつ、設置形態の変更については国立大学法人の功罪をみきわめてうえで最終判断することもあり得る。あるいは「公立大学法人法」(仮称)を別途制定する努力を払う選択肢もあろう。
このような状況下で、公立大学が今すぐにも法人化問題の検討に着手すべき理由は次の3つである。
第一に、国立大学の法人化の検討がこれまでの大学のあり方を根底から変更する要素を多く含んだものであり、たとえこれらの新しい制度に準拠して公立大学に適用される部分が多いとしても、その内容を十分に理解し、周到な準備を進める必要があるからである。
第二に、国が設置する大学と自治体が設置する大学とでは、同じ規定が適用(準用)されるとしても、その規定の持つ意味が異なる場合が生じてくるからである。
第三に、公立大学は自治体設置であるが故に、国立大学には無い課題が存在し、それに対応するための制度的裏付けを必要とする部分が生じるからである。
これら第二、第三の理由については、公立大学自身が十分な時間をかけて、課題の発見と検討に取組み、必要となる制度の修正・新設について、文部省、自治省、設置自治体等に働きかけていかなければならない。
そのための時間的余裕は無く、今ただちに着手したとしても十分とは言えないほど切迫している。この準備の出遅れは、公立大学のみならず設置自治体においても同様である。また、公立大学長へのアンケート調査の回答に見られるとおり、検討作業は各大学の学内検討のみならず、公立大学協会での検討が強く求められている。設置自治体との共同作業で検討すべき点も多い。そこで公立大学に固有の課題を考える場合、次のような幾つかの背景を十分に踏まえた検討が必要と考えられる。
同一設置者による大学の数は、国立大学の場合には法人化にともない多少の統合が予想されるとしても、数十校に対して設置者は国一つである。一方、公立大学の場合、複数の大学を設置している自治体は多くはなく、ほとんどの場合、設置者と大学が一対一で対応している。また、複数の自治体が関与して一つの大学を設置している事例もある。国立大学と公立大学のこの差は、法人化された後の大学と設置者との関係にも大きな違いとなって表れてくると思われる。
国は高等教育施策を推進するため大きな組織と職員そして予算を持っている。一方、公立大学を設置している自治体は高等教育に関与する職員も充当すべき予算も少ない。また、その母体となる設置者の組織の大きさ、財源の規模など、国とは状況が全く異なる。
国と比較したときの設置自治体の規模の小ささは、必ずしも公立大学の運営に関わる事務組織と予算の不足を意味するものではない。しかし、設置自治体は地方行政制度の変動期の中で恒常的財源不足の状態にあり、公立大学の運営が、首長の方針、財政状況、等の影響を敏感に受けやすい構造的課題を抱えている。
国も自治体もその政策の実施は税金によって賄われており、この意味において国立大学も公立大学も納税者の監視を受けている。しかし、納税者と大学との距離は、住民にとって国よりも自治体の方が近いのと同様に、公立大学は住民にとって身近な存在である。
そして、国民からみて大学教育の推進が国の施策として必須であり当然のことと受け止められやすいのにたいして、自治体が大学を設置し運営することは選択的であり、必ずしも当然視はされない可能性がある。したがって、自治体が税金によって公立大学を運営していくことを積極的に意義づける挙証責任は大学側にあるといえる。
行政の仕組みが大きな転換期にある今日、国と同様に自治体においても行政改革が求められている。しかし、自治体においてどのような面から、どのような目標設定をして行政改革に取り組むかは、当然、国の場合とは目的と内容が異なってくる。これは地方分権の進め方の問題である。したがって、公立大学の法人化が自治体の「行政改革」の一環として打ち出されていくこととなるにしても、その目標設定において国立大学とは異なる面を有する。
国においては、高等教育を企画立案する人材、大学運営に関わる人材を多く抱えており、文部省が大学事務局間の人事異動・人事交流などにより人材の滞留を防ぎつつ、職員個人としての高等教育に関する政策立案や執行技量の成熟を見込むことができる仕組みができている。
しかし、自治体においては高等教育に関与する職場が限定されているため、大学事務への習熟は人事の滞留と表裏一体となりやすい。また、組織的にも、高等教育政策の深まりや長期的展望が醸成されにくい。さらに、公立大学は設置されて間もない大学も数多くあり、この場合には当然、設置自治体にはノウハウも人材も蓄積されていない。
したがって、公立大学においては全く異なる分野での行政事務の経験を生かしつつ、新たに大学の管理・運営に取組み、その力量を発揮できるような仕組みが求められる。
以上の観点を踏まえ、ここで国公私立の大学に共通する課題と、公立大学に固有の課題を各論レベルで列挙しておきたい。*を付した項目は、公立大学固有の課題である。そのうち緊急に取り組むべきと思われる課題には**を付した。なお、(3)(4)(5)(6)は「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」の4委員会の検討課題に相当するが、とくに公立大学に関するものを追加し、*を付した。