平成18年度委員会の研究・開発活動を中心に/公立大学協会会長 宇野重昭(島根県立大学長)
公立大学の掲げる「公立」の「公」(公共性)とは何か。この命題は2000年度の公立大学協会の組織改革以前から、たえず問い続けられてきた問題であり、一般的には、それは様々の地域との関わりにおいて語られてきました。ところが2004年4月に国立大学が法人化され、その多くが地域貢献の問題に取り組むようになると、公立大学との相違が不明確になってきました。また、本来地元との密接な関係を持ってきた私立大学も、最近では近隣地域の大学間協力を拡大し、地域の公共利益に対応していこうという努力を強化しています。こうなると「公立大学は地域の自治体が設置した大学だから地域と密着していて当たり前」という従来の考え方が単純には成り立たない時代になってきています。
公立大学の公共性は、少なくとも国家意識を背景とした公共性ほど抽象的・観念的なものではないと思います。しかし反面、教育が本来的に公的性格をもっているという意味ほど拡散した「私的公共性」にとどまるものでもありません。
はっきりしていることは、公立大学が地方自治体と密接な関係をもっており、国家と一線を画しながらも国家の地域における公的任務遂行にその存在理由を見出していることです。そして公共の「公」とは、「官と民というアクターが共同で支えるシステム」(薮野祐三)ともいえます。当然「公」の概念は、「相対的」なものです。従いまして一方において地方自治体の財政困難に同憂するとともに、働く教職員の勤務条件に思いをこらします。
公共の「公」とは、やはり薮野教授が指摘しているように多元的な要素が相互に影響し合う空間を意味します。公立大学は、いわゆる地方の地域としての「地域」だけではなく、県・市議会、県庁・市庁、多様な教育研究機関、国外の教育学術機関、そして内外の各種の団体(教育者、市民、労働者)など、具体的かつ多様な組織と交流します。そしてその交流のなかに常に「公」を求めていきます。
そう考えてくると公立大学は、「公」と「私」という両者の概念を現実の場において共に体現し、多様性の価値のなかで、方向性を探求していく存在でなければならないと思います。
従いまして地域の多様性を保障し、多様な価値の出会いをつくりだし、共に働くネットワークのなかに「公」を創造し、公立大学の魅力を確認するために、公立大学協会は、多くの批判を生かしながら、共に助け合うシステムを構築すべく努力しています。
今年度は、常置委員会として、政策委員会、人材育成委員会を設置しているのをはじめ、公立大学法人化特別委員会、評価特別委員会、人事制度専門委員会、マネジメント専門委員会を設置し、公立大学独自の可能性を追求しています。公立大学の「公」を意識した研究開発、グローバルに考えローカルに実践していく方法を共々に追い求めていきたいと思います。会員の各校のご協力をお願いします。
公立大学教職員の能力開発セミナーについては、平成18年度10月以降引き続き以下の2セミナーを開催いたします。皆様の積極的なご参加をお願い致します(詳しくは協会事務局まで)。
各界からの提言を頂き、公立大学の経営・マネジメントについての認識を深め、公立大学の経営概念の構築を試みます。
公立大学の現場の状況を踏まえながら、マネジメント技法とともに、創造的に仕事をする大学アドミニストレーターのあり方を議論していきます。