2006.11.6 学術総合センター 中会議室
公立大学の学長のいわば相互研修、勉強会、交流会という性格を持つ「学長会議」に公立大学の設置者として初めて寺田典城・秋田県知事をお招きしました。また大学経営、大学改革に造詣の深い、清成忠男・法政大学学事顧問を講師としてお招きました。
テーマは、大学改革を推進する学長のリーダシップについて。現在、学長のリーダシップ作りは、新しい時代に大学の方向を示すための社会的要請となっております。しかしながら、現実に大学の学長のリーダシップの強化を実現することは容易ではありません。設置者との関係、大学経営の独自性、経済的合理性、評議会や教授会との関係など難問は山積しております。特に公立大学の場合は、設置者自身も厳しい環境の中におかれており、各大学の課題、学長の見解も多様です。
このような状況を踏まえ、清成先生と寺田知事には、それぞれのお立場とご経験から、公立大学のトップマネジメントに求められる課題と、公立大学の今後の展望について伺いました。さらに、3つの公立大学の学長から報告をいただきましたので、以下の記事で概要を報告します。
今後も設置者の知事・市長を招き、地方における知の拠点づくり、公立大学の課題等についてご講演をいただきたいと考えております。皆様のご意見・ご要望をお待ちしております。
(公立大学協会会長・宇野重昭)
私は、「県行政で何を一番重要視するか」と問われれば、まず「安全・安心な社会」の保障を挙げます。そして、もうひとつは「ひとづくり、教育」です。誰もが等しく教育を受けられるチャンスを与えられ、チャレンジできるシステムをしっかりと作っていくことが、行政の大きな役目だと考えています。
国際教養大学のルーツは、ミネソタ州立大学機構秋田校という県の認可を受けた専修学校です。私が知事に就任した99年当時、県がその運営をサポートしていくことは困難な状況になっていました。しかし、そこにはしっかりと目的意識を持って学ぶ学生たちがいました。私は、従前から、21世紀はグローバル社会に対応できる人材の育成が重要と考えていましたから、それを機に、例えば確実に海外留学できるような、従前の日本の大学にはない「学びのシステム」を持った大学を創ろうと決心しました。それまでの大学の悪しき慣習は排除し、しかも新しい公立大学法人形態でスタートすることにしました。ですから、文科省に地方独立行政法人法の制定前倒しをお願いしました。とにかく、文科省とは侃々諤々の議論をしました。
また、「少子化、大学全入の時代になぜ秋田で国際系大学か」というようなことで、県議会で一度関係予算を否決されたこともありました。ですから、敢えて私は2期目の選挙で、国際教養大学の設置を前面に打ち出して戦いました。
公立大学はよく、地域振興のために創るなんて言われます。しかし私は、地域振興のためではなく、学生が学ぶシステム、環境として何が一番いいかということを第一に考えて大学を創るべきだと考えています。国際教養大学もそうした視点で創ったつもりです。私は、反対があってかえって良かったと思います。反対があり、大いに議論したからこそ、理想をとことん追求できました。
少人数学習で、授業は全部英語で行われます。留学生と一緒の寮生活、1年間の留学義務付け、卒業時のトーフルは600点以上必要。教員には評価制度が導入され、3年任期制です。こうした教育システムが評価され、入試倍率は開学時から毎年度10倍以上で、偏差値も非常に高くなっています。学ぶシステムの更なる充実を図るため、来年2月から「図書館・総合学習センター」の建設に入ります。既存の図書館同様に24時間オープンです。更に次のステップとして、平成20年度には専門職大学院を設置する予定です。
次に、秋田県立大学についてです。ここでも、秋田にしかできないことをやっていきます。今年4月、法人化するとともに全国初のアグリビジネス学科を設置しました。大潟村にある190ヘクタールの農場を使い、学生に農業経営を実践させ、生産からマーケティングまで農業の全てを覚えてもらおうという学科です。
実は、この大学はかつて県の地方機関という位置づけで、鉛筆1本買うにも管轄する地域振興局にお願いする必要がありました。そんなことではいい教育ができないと、私はその体制を壊しました。更にこの4月からは法人化しました。大学に行政体質が持ち込まれたら、しんどいです。大学は、行政ととことんケンカしたほうがいい。学長が権限を持って、責任も大学がとるというやり方をしていくべきです。
設置自治体は、あくまでもサポーターです。本県では大学の支援と、これに関連の深い国際化・科学技術・試験研究の推進等を総合的に進めるための「学術国際部」を設置しています。これも全国唯一だと思います。
国際教養大学の中嶋学長、秋田県立大学の小林学長にはたいへん御難儀をかけています。私は時々、お二人や県内の国立大学の学長さんらと、お酒を飲みながら大学改革や秋田・日本のあり方など、様々なお話をさせていただいております。今後も大いに議論しながら、「秋田ならではの大学」を目指していきます。