公立大学協会の新着情報

【書籍のご案内】「可能性としての公立大学政策」(協会常務理事・事務局長 中田晃著)

2020年11月11日

一般社団法人公立大学協会 常務理事・事務局長の中田晃による書籍「可能性としての公立大学政策-なぜ平成期に公立大学は急増したのか」が上梓されましたので、以下のとおりご案内申し上げます。


概要

(「はしがき」より)
 本書は、任意行政にすぎない公立大学の設置を、地方自治体が何を拠り所に、どのように決断したのか。その政策過程を明らかにするものである。
 従って内容としては、大学の理想像を示したり、公立大学ののあるべき姿を論じたりするものではない。公立大学の設置過程からから政策要因を見出し、要因間に相互作用が見出されればメカニズムとして記述する。その際には地方自治体の組織的な側面とともに、そこに関わる関係者の信念・願いといった人間的な側面にも着目したい。

目次(抄)


・序章 平成期の急増を紐解くその前に
・第Ⅰ部 平成前期の集中的設置  
   第1章 信念がひらいた公立大学設置(釧路公立大学・兵庫県立看護大学・岩手県立大学)
   第2章 共通する政策環境
   第3章 「政策の窓モデル」が示すメカニズム
・第Ⅱ部 平成中期以降の設置政策の多様化
   第4章 短期大学からの転換(新見公立大学・福山市立大学)
   第5章 大学統合(東京都・大阪府)
   第6章 学校法人からの設置者変更(高知工科大学・名桜大学・山口東京理科大学)
・終章 可能性としての公立大学政策

推薦文

一般社団法人公立大学協会 会長 鬼頭宏(静岡県立大学長/歴史人口学)

公立大学を設置する地方自治体政策に光を当てる試み
 公立大学は、平成期において39大学から93大学へと、その数を一気に増加させた。本書は、公立大学の設置を決断した地方自治体の政策過程を明らかにする試みである。
 著者は平成期の設置政策を2つの時期で4分類する。平成前期には、地方分権の後押しを得て、公立大学設置の抑制が解かれ、集中的な設置が行われた。しかし、中期以降になると新規の設置はわずかとなり、「短期大学からの昇格」「大学統合」「私立大学の公立化」という3つの政策に分化する。
 これらの政策過程は、18歳人口の急減、パブル経済の崩壊をはじめとする、平成期の社会構造の変化への反応として描きだされる。その一つが、超高齢社会への対応として行われた公立看護系大学の集中的な設置である。これは、戦争末期に銃後の医師養成を目的に多くの公立医学専門学校が設立されたこと(戦後に医科大学・医学部となる)を思い起こさせる。公立大学は、国家的な難局を引き受けて、その数を増していったのである。さらにそれは、18世紀末の四半世紀(1776~1800年)に天明大飢饉による人口減少のさなか、厳しい幕藩財政を押して藩校の集中的設置(86校)が行われたことにも通じる。
 我々は、このコロナ禍の下で、公立大学が今後何を引き受けていくのかを問わなければならない。「政策の窓モデル」を用いた分析は、自治体政策の組織的側面とともに、 政策に関わった人々の人間的な姿を浮き彫りにする。それは、今後の公立大学政策を推し進める我々関係者に、末来をひらく力をもたらしてくれるであろう。

発行

特定非営利活動法人学校経理研究会


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